ワールドトリガー28巻に学ぶ成長の話
ワールドトリガーの28巻を読んで、ヒュースの話がめっちゃ良いと思ったので、紹介したいと思いつつ、うまく書きにくいなーと放置していたのですが、旅行中暇だったので書いてみました。この巻はネットでもかなり話題になっていますので、今更感はあるのですがね。
ワールドトリガーが分からないので、内容がわからないよ…とならないように説明しているつもりです。わからなかったら原作読んでください!
ワールドトリガーの(この話を理解するのに必要な)最低限の粗筋
ワールドトリガーの主人公たちは異世界人と戦う戦闘員です。異世界からの侵攻がないときは、それぞれ鍛錬を積んでいます。また、個人同士で対戦することで各個人に対してランクが付けられています。また、個人はチームに属しており、チーム戦も行われており、チームについてもランクが付けられています。
このエピソードの登場人物
- 修 ... 主人公。個人の才能(≒戦闘力)は低いのに、チーム戦では頭角を現している
- 麓郎 ... 修の活躍を見て、焦りを感じているが、何をしたら良いのか自分では答えを出せない
- ヒュース ... 修のチームメイト。メチャ強い
- 香取 ... 麓郎と同じチームメイト。エース
- 犬飼 ... 麓郎の師匠
28巻の話の筋
麓郎は自分が伸び悩んでいることを自覚していて、同じくらいの才能だと思っていた修が頭角を現していることに焦りを感じていまいた。そこで実力者であるヒュースに自分はどうしたらよいのかを思い切って聞いてみたところ、ヒュースに正論で完膚なきまでにへこまされる、という話です。
なのですが、話をそのままトレースするのは無理なので、話されている主題をメインに書こうと思います。
自分で考させることの重要性
これは、教える側の話ですが、一から十まで教えるのではなく、教えられている側に自分で考えされることが重要だという話。
麓郎の師匠の犬飼が訓練の意図を麓郎に伝えていなかった理由について問われた時に、「麓郎に自分で気づいてほしかった」という意図があったと答えています。
いつまでも一から十まで教え続けていては本人が独り立ちできない。独り立ちするためには自分自身で考えたことにチャレンジして、その結果を引き受ける必要性があるということを述べています。
「ワールドトリガー28巻」 p.199
個人的に時間がないので答えを言ってしまうことが多いので反省…。
実力とは結果である
麓郎は実力についてヒュースに尋ねますが、ヒュースの回答はシンプルでただの「結果」だといいます。 この質問は、麓郎としては、自分に実力がないから結果が出せないと思っていることを暗に示しています。
ですが、ヒュースはそれを否定します。たい焼き屋を例に出して、要は「美味しく作ることができる」ことが実力だといいます。 実際には、これは、美味しければ結果的に売り上げが上がるということを暗に示しています。 個人的な実力としては「美味く作れる」ことで、タイ焼き屋(チーム)としては「よく売れたほう」が実力があることになります。 そして焼く能力に限らず、売る能力でもよいので、「結果(売上)にプラスを与える能力」が「実力」だといいます。
「ワールドトリガー28巻」 p.207
目標に対する期限の重要性
自分がたてている目標には明確な期限を設けるべきだと述べています。 なぜなら、目標に期限がない場合「失敗を正しく認識できない」からだと言います。
期限までに達成できなかった場合、それに費やしたもの(時間、コスト、信用、信頼など)を「失った」と認識できますが、 期限がない場合は、無限に先送りできるため、「まだ何も失っていない」ことになります。
人は「’失ったこと」を認識して初めて、現実的な反省や改善ができるといい、「失ったこと」をいつまでも認識できずに、反省も改善もしない状態を「足踏み」と呼んでいます。
「ワールドトリガー28巻」 p.214
修には明確な期限があり、結果を出すために今何をしなければならないかということを常に考え続けていたからこそ、結果を出すことができた。一方、麓郎は目標は立てていたが明確な期限を設けていなかったので、結果を出していないにも関わらず「足踏み」してしまっていた。と結論づけています。
正しい自己認識の重要性
ワールドトリガーには粗筋に書いた通り、個人戦とチーム戦というものがあります。修は戦闘能力自体は低いので、個人戦では麓郎よりも下位になります。ですが、チーム戦では仲間の特性や対戦相手の特性をよく考えた戦略を練ることで勝利しているため、チーム戦では麓郎のチームより修のチームほうが上ということになります。
麓郎のチームメイトの香取も入れて、チーム戦でのそれぞれの実力を、麓郎の認識で並べると、修(A)、香取(Bの上)、麓郎(Bの中)の順となりました。ですが、ヒュースに言わせると、麓郎のレベルは「C」だと断定します。陸郎の自己認識よりももっと低いということを突きつけます。
チームに香取という強すぎるメンバーがいたため、麓郎は自分の実力に見合わない順位になった。そして、結果的に麓郎は自分の実力に向き合うきっかけを得られなかったと言っています。
麓郎は自分の実力を客観視できていないため、実力を上げるために「何か」をしようと思うものの、適正な段階に挑戦しようとしていないため、結果的に何をしたら良いのかわからなくなってしまって、人に答えを求めてしまうという事態になってしまっていると、ヒュースは結論づけています。
「ワールドトリガー28巻」 p.233
成長するには正しい自己認識を持って、正しい目標(壁)に臨まなければいけない、ということです。
目標を設定し、達成できる内容になるまで刻む
麓郎は「自己認識を正したうえで設定した、低い目標すら達成できなかったら.…」ということを恐れますが、ヒュースは「目標を刻め」と言います。「自分の実力でできるであろう目標を設定しそれをやり遂げる」ことが重要であると述べます。
「ワールドトリガー28巻」 p.237
麓郎はここに至って、成長したいと思いつつも、挑戦を避けることで、自分自身の無力さに向き合う結果になることから逃避していたということに気づかされます。
ですが、「何もできない」などということはほとんどの場合なく、人によって時間の問題はあれ「何かしらできるようになり」ます。ヒュースは自転車に乗るということを例にしていますが、「自転車に乗れなかった状態」から「乗れるようになった」時点で、できないことができるようになっています。
もちろん、人によって学習スピードや結果をだすまでのスピードには差がありますが、そこは人と比べてもどうしようもないことなので、自分と向き合うしかありません。ヒュースは、それを「努力」だと言っています。
そして、「努力」して、できなかったことができるようになったことで「自信」になるのだと述べています。
「ワールドトリガー28巻」 p.244
まとめ
麓郎は正しい自己認識を持っていなかったため、現状の自分に見合わない壁を越えようとして、何をしたらいいのかわからなくなっていた。そのため、自分に何が足りないのか人に答えを教えてもらおうとしていた。また、目標をたてていたものの、明確な期限を設けていなかったため、失敗を正しく認識できず、必要な改善や反省をすることができず、足踏みをしてしまっていた。また、成長したいとは思いながらも、「成長できなかったら…」という不安から、挑戦することから逃げていた、ということに気づかされ、打ちのめされてしまった、ということです。
では、どうしたら良いのか?
麓郎を半面教師とすると、以下のようにすればよさそうですね。
- 自分の実力を正しく把握する
- 目標を立て、期限を設ける
- 最終的な目標は高くてもよいが、その目標を今の自分の実力に見合うように、段階を刻む
- できないことができるようになったことで、自信をつける
最後のところは、できるようになっただけではなくて、結果を出すことで自信になるような気がしますけどね。 そして、自他ともに「実力がある」と認識できるんじゃないかな。
終わり
以上、ワールドトリガー28巻のありがたいお話でした。こんな拙い説明よりも原作読むことをお勧めします。
28巻は麓郎がへこんだところで終わってしまったので、次巻以降で巻き返せるのか、もしかしたらドロップアウトしてしまうかもしれませんが…、頑張ってほしいところですね。
僕の好きな言葉に「始めるのに遅すぎるということはない」というものがあります。イギリスの政治家の言葉らしいですが、ワインバーグの本で読んだと思ったんですが、見つからないんですよね。はて…?
まぁ、ぐだぐだ悩んでる暇があったら始めたほうが良いよということです。足踏みはやめて進みましょう(自戒を込めて)。